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みんなの

’’知りたい’’を、

叶えたい。

This

month's 

Interview

                     July 2013

 

                   

我々が主役になっては

いけない

できるだけの

アシストをするのが

基本だと思います。

 

 

   

   特定非営利活動法人     

日本国際ボランティアセンター

  アフガニスタン事業統括

 

        小野山亮様

小野山さんが現在どんなお仕事をされているかについてお聞かせください。

 

 日本国際ボランティアセンター(JVC)という団体で、アフガニスタンでの活動を行っています。

 

 アフガニスタンは本当にいろんな国に囲まれているので、いろんな文化があっていい面もあるんですけど、いろんな国が口を出してきて、それで戦争が絶えないという歴史をずっと持っているんです。民族もたくさんの人がいて、一つの民族が力を持つと他の民族や他の国が嫌がるというのがあって、いつもせめぎ合いをしているんです。2014年の末までにアメリカを中心とする外国軍が完全に撤退してしまうこともあって、関連して、私たちの事業地でも死傷事件があったりと、非常に不安定な状況なんですね。アメリカが去ったら関心が下がると思うんですけれども、治安に関しては結構不安が大きいです。

 

 事業の内容に入りますけれども、戦争の影響で基礎的なサービスすら機能していないので、それをお手伝いする事業をしています。大きく分けて柱が3つあり、1つ目が保健医療の活動と、2つ目が教育支援、3つ目は少し聞きなれないかもしれないのですが、政策提言という活動をやっています。順番に説明しますね。

 

 1つ目の保健医療活動についてですが、人口が2万1000人の地域に診療所を運営しています。一つがほぼ完全な設備が整った診療所と、もう一つが診療所とは結構離れたところにあるために運営している、少し施設が小さな簡易診療所です。今丸々その診療所をJVCで運営している感じになりますね。要するに、建物の整備から機材の購入・維持や、お医者さん・医療スタッフの給料、薬代とかをそういうのを諸々全部管理しています。全部やってしまうというのは、本当はあまりよくないんですけどね。元々医療とか教育って、そもそも、その国の人達がそれをするにふさわしいことですよね。その国のことはその国の人が一番よく知っているし、アフガニスタンの人がやってもらうのが一番いいんですけど。建物自体、戦争でちゃんとした維持ができなかったから、我々のような外国人のNGOが建てたり維持したり、それから給料払ったりというのをせざるを得ないようなところがあります。

 

 あとは、教育が戦争中は受けられなかったりということもあるので、お医者さんとか医療スタッフのような人材も不足しているような状況があり、一定の研修なども必要です。JVCの医療スタッフを通じて地域の保健に関わる専門家の方に指導することもありますが、医療スタッフ自身も、国や外部のNGOや国際機関が支援している研修プログラムに出てもらったりしています。そこで研修を受けたJVCの医療スタッフが、さらに地域に行って地元の人にいろいろな研修をするような形になっています。また、将来的に外部の人間が去って行った後は、現地の人が病院を運営していくことになりますが、その時って外部からのお金は減るでしょうし、たくさん来る患者さんに今のレベルで医療を提供できるかというと難しくて。だから一番簡単な解決方法は患者さんを減らすことなんです。要するに病気にならなければ、病院っていらないじゃないですか。だからよっぽどひどい症状の人を除けば、自分で病気を治したり、予防したり栄養をつけたりということで、病院に行かなくても済むようにしたいんです。それが地元の人たちの健康意識にも繋がるし、自分たちで問題を解決しようという取り組みにも繋がるので。

 また、今までアフガニスタンにはカルテも何も存在していなかったんですよ。でも患者さん見るのにカルテないって、病歴も分からなくてだめじゃないですか。それで、家族カルテを導入しました。(写真参照)家族カルテというのは、個人のものだけではなく、家族の病歴も全部書くカルテのことです。家族といっても大家族ですし、複数の家族の履歴を見るとその地域の状況も分かるんです。例えば同じ地域の家族の間でマラリアが流行しているということだったら、周囲に原因となる水たまりがあることなどが分かるんですね。なので、患者をみるだけではなく、家族ごと地域ごとの疾患を分析して、その地域ごとの予防に取り組んでもらうことができます。

 地域でいろいろな取り組みをしていかないとアフガニスタン全体の医療が向上しないのと、診療所にだけお金かけてやっていくと将来的に持続性がないので、地域のみんなで健康に関する対策をしていけるようにしたいんです。なので、診療所から病気の状況を提供して、伝えられた村人が自主的に取り組みを行うためのサポートをしています。

 

 その中で、いくつかの地域で保健教育というのをやってます。その一環として、地域の有力者からなる保健委員会というものがあります。地域の取り組みを増やす目的で、組織化のサポートをしています。自分たちでいろいろなことを考えて取り組みを作っていけないかということを話している感じですね。保健委員会には、主に地域の長老たちや学校の先生たちなどいて頑張っているんですけど、地元の人が主体的に作っている活動なので、我々は外部からなんらかのサポートができればという立場です。また、必ず村の人たちに話を通してから行わないと、村人との関係が険悪になったり、さらには活動を行うのが危険になったりするので、そこは気をつけてやっています。

 そういう面ではやっぱり、長老たちは有力者なので常に村のことを見ているんですよね。彼らは村の事を仕切っている人たちなので、保健とか地域の事に関して「村の人に聞いてもらえないか。」とこちらが働きかけをすると、彼らが「じゃあやろう!」と言って始めてくれることを期待しています。また、長老たちが話し合うワークショップの場を設けたりもしています。ポストイットや模造紙を用意してね。地区ごとのグループに分かれてもらって、どういう問題があるのか課題を明確にし、達成点を定めて書き出してもらいました。井戸水の水質が悪くて病気になるとか、蚊が発生しないように水たまりを作らないようにするとか。そのあと、みんなで発表しあいました。こういう手法も、押し付ける訳ではなく広めて行けたらなと思っています。長老たちからこういう活動を始めてもらうようにしています。

 

 元々戦争があるからこういう活動をしなければならないので、戦争や暴力という問題自体を解決することが、本当は根本的な解決策ですよね。だからもちろん、出てきた問題への対処という意味で活動をしていますけれども、問題を解決するために訴えるといのも大事なので、活動の柱にしています。この活動だけではなくて、日本でも私たちが市民の皆さん、外務省や議員さんに「アフガンでこういった問題があるので何とか日本政府が働きかけてほしい」と訴えることも日常的に行っています。

 

人道支援を行われていますが、人道支援ならではの難しさを感じることはありますか?

 

 やっぱり人道支援の難しさは、セキュリティのリスク、治安、身の安全、事業地自体が撤退にならないかということを含めて常に感じます。あとは、政治事情に大きく影響されるということですね。治安に関して言うとほぼ毎日事件、ニュースが入ってくるので、それに対して「今の活動のままでいいのか」や「その日はフィールドに出るのやめようか」などと、かなり神経を使ってやっています。とにかく安全に活動をできるように。それが一番大きいですね。

あとは、その二つに絡みますけど、何か問題があった時に、それを言うのがいいのかどうかということですね。活動地の安全や最終的な平和を考えるとどこまで言うのが良いのかには気を遣います。それによって事業地が影響を受けたり、あるいはスタッフが狙われることが起こってはいけないので、どこまで言うかというのも難しいところですね。

 

 そして、我々が主役になってはいけない。現地の人が現地のことを一番知っているのに、我々が主役になるなんておこがましい。また、我々が主役になってしまったら、去った後困っちゃいますし。戦争など様々な状況で、ある意味偶発的に自分たちだけではどうしても厳しくなった人達が、いずれは自分たちだけで地域での活動ができるように、できるだけのアシストをするのが基本だと思います。

 

 

 

将来国際協力のお仕事に関わりたいと思っている学生はいると思いますが、どのような準備や心構えをしたらいいかアドバイスはありますか?

 

 そうですね、難しいけどな・・・。日本にいるとやっぱり外のことを知ったりする機会ってなかなか少ないし、多文化の環境がないので、やっぱり自分で求めないと得られないですよね。なので機会を見つけて、なんらかの直接の実体験を持った方がいいのかなと思いますね。

そうは言ってもキャリアとしてこういう仕事をするとなると、それなりに日本社会では難しくて。スタッフの人数も限られているし簡単にはいかないので、どうしても苦労は避けられないと思うんですね。

 だけどね、やっぱりどうしても頑張りたいなと思っていたら、人生不思議なもので、絶対どこかでなんらかのきっかけがあるんです。僕もそうなんですけど、ここにいるスタッフも、まず最初はボランティアだったり、報告会を見に行ったり、あとは団体がインターンシップを持っていればそこから入ったりという場合が結構多いんですよ。インターンやボランティアをしていると、他のNGOとも繋がるじゃないですか。そうすると他の団体からも「いい人いない?」となった時、紹介できたりもしますから。

 曖昧な言葉で恐縮ですが、何からやるかというよりも、頑張っていれば認められて経験もつくし、やっていると、必ず見てくれる人がいるんですよ。

あとはそういう皆さんがなるべくポジションにつけるように、NGO全体でも頑張っていて。できるだけ職員を雇えるような資金作りとか、働きやすい環境づくりだとか。あとは社会に分かってもらう活動というのもやっています。僕の時代や前の時代よりも、ポストを得られる機会は増えていると思うので、機会を見つけてどんどん飛び込んでほしいと思います。

 あとは団体によってカラーやポリシーが違うので、実務経験を積むという意味ではどこの団体から入ってもいいと思うのですが、最終的には自分がどういう活動をしたいのかという夢やポリシーがないと結構ジレンマは起こってくると思います。

 

 

 

学生にメッセージをお願いします。

 

 諦めないで楽しくやってくださいという感じですかね。楽しんでチャレンジしてくださいという言葉がいいですかね。

 

 

 

 

 

 次は二つ目の柱の教育支援ですね。まず教え方をなんとかみんなで学びあえないかということで、授業研究という活動をしています。これも医療と同じなんですけど、知識を我々外部のよそものが一方的にこうしよう、と言うのでなくて、先生同士での教え方の学び合いを進めています。教員同士で意見の交換や高めあいをしてもらう。レッスンスタディ、授業研究という形のものです。 (写真参照)ある先生が子どもたちを教えているんですけど、周りで他の先生たちが授業を見ていて、今やっている授業の問題点や良い点を、後の話し合いの為に書き取っています。

 生徒に対しても、「今の授業どうだった?」とJVCの教育担当のスタッフが聞き取りをしています。

 教育の活動は他にもいくつかあって、保健医療を学校でも運用できないかということで、健康教育という授業を学校でやっています。現地の専門家に協力をあおぎながら、授業で健康・教育・応急処置、栄養について教えたり、先生たちを対象にした応急手当の研修もやっています。

 これには、保健医療に関する知識を、子どもから家庭に伝えてもらったりとか、先生から地域に広めてもらったりというメリットがあります。私たちは、どこまでそれが広がっているのかの評価活動もしています。評価方法は、難しいんですけど、例えば、「学校で習った応急手当の学習が、役に立った場面はありますか?」「その時あなた自身は学んだことを元に素早く対応できましたか?」といった内容の質問状を、村人など、対象者ごとに配って集めて分析しています。

 他にも生徒に対する保健教育の一環なんですが、生徒に保健教育を通して学んだ知識を作文にして書いてもらって、コンテストをするんですね。それで、優秀作品を学校に、壁新聞、ヘルスジャーナルとして貼るんです。優秀作品が並べてあって、顔写真と一緒に。それを他の生徒も見て「なんだ?」と興味を持ってもらったり、あるいは読み書きの練習にもなるので、これで関心をもってくれるといいかなと思っていますね。

学校の図書室に保健関係の本を寄贈したりもしました。

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最後に政策提言についてです。

例えばこれは診療所の入口の門なんですけれど(写真:診療所の上空を飛ぶ軍用ヘリ)、診療所の回りを外国軍ヘリとかが飛んでいるんですね。数年前、私たちの活動中に被弾したんです。その時に現地のJVCのスタッフが「ロケット弾の破片の写真を見せて、こんなことはやめてもらいたい」ということで、証拠として集めたんですね。治安担当のスタッフの責任者が集めた証拠を元に、外国軍とNGOなど民間の人が集まる民軍会議というところで、「軍は市民に被害及ぶようなことはしないで欲しい」ということを証拠と一緒に訴えたのですね。

 

今回取材に協力していただいた本国際ボランティアセンター様とは...

 

 日本国際ボランティアセンター(JVC)は、1980年にインドシナ難民の救援を機に発足し、現在、アジア、アフリカ、中東、そして日本の震災被災地で活動している国際協力NGOです。カンボジアやラオス、南アフリカ等の農村で生活の改善に取り組むほか、紛争の影響を受けるパレスチナやアフガニスタン、イラク等では医療をはじめとした人道支援を行っています。また、津波や原発事故の被害を受けた宮城県気仙沼市と福島県南相馬市で地域の復興を支えています。これらの現場の声をもとに、政府や国際機関への政策提言活動にも力を入れています。

 

 

 

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